海外送金にからんだ不正行為(マネー・ロンダリングやテロ資金の送金など)の手口が巧妙化し、金融当局は金融機関に対してAML対策の強化を求めています。金融機関各社も、AMLに多額のリソース(IT投資とスタッフ)を投入していますが、不正手口の巧妙化に対して対策が遅れがちです。ここでは、人工知能を活用したAMLツールを導入した英スタンダード・チャータード銀行の事例をご紹介します。
■ AMLに関する金融機関の事業環境
海外送金にからんだ不正行為(マネー・ロンダリングやテロ資金の送金など)を阻止するため、金融機関は多額のリソースを投入してAML対策を実施しているが、犯罪手口は常に進化しており、対策も改善を続ける必要がある。加えて、ファースター・ペイメントの普及やグローバル貿易の増加、複数の国をまたがる取引が増えるなど、犯罪者が付け入る隙も増えている。金融機関は、精査が必要となる取引件数の増加に悩まされているが、フォルス・ポジティブ(注)が90%に達しており悩みは深い。
(注)AMLにおけるフォルス・ポジティブ:正常な取引であるにもかかわらず、不正の可能性があるとしてアラートの対象(=人的精査が必要)と誤認すること。またはそのトランザクション。
各国の金融当局は、犯罪の巧妙化に対して、金融機関のマネロン対策をこれまでの「ルールベース」から「リスクベース」へ変更/強化するよう要請している。人工知能を活用してリスクベース評価を行う新しいテクノロジーにも、一定の理解を示している。