Blogs by Susumu Suzuki

May 15, 2023

フィナンシャル・アドバイザー(FA)の主要業務は「資産運用アドバイス」ですが、運用手段のコモディティ化が進み、また市場ニーズも変化していることから、FAのサービス内容を「退職後の資産取り崩しアドバイス」にまで拡大する必要があるとの論議です。


■ 事業環境の変化
米国では、フィナンシャル・アドバイザー(FA)の役割は、2000年以前は投資銘柄の推奨が中心であったが、21世紀に入ってからは中長期の資産運用管理/ポートフォリオ管理へと変質してきた。更に昨今では、退職後の資産管理全般(資産運用に加え、定期的に必要となる資金の引き出しにまつわるアドバイス)にまで視野を広げる必要性が論議され始めた。背景には、以下のような市場環境の変化がある:
(1)資産運用サービスのコモディティ化
長期に渡って資産を増やすには、リスク許容度に応じたポートフォリオ運用が不可欠だが、パッシブ運用の投信/ETFの普及やモデル・ポートフォリオを活用することにより、資産運用のローコスト化が可能になってきた。FAにとっては、これまでと同じサービスだけでは収益源であるアドバイザリー・フィーが圧縮されてしまう可能性がある。

May 8, 2023

量子コンピュータ技術は、20世紀には理論でしかありませんでしたが、2010年頃からはハードウエア開発が始まり、2020年頃からは研究者向けの利用が可能となって、将来のビジネスへの影響が論じられるようになりました。ここでは、金融業界における現状認識をまとめてみました。


■ 量子コンピュータの適用分野
量子コンピュータは、量子力学を活用して従来の電子回路では難しい非常に複雑な計算を短時間で実行する仕組みで、2010年頃からは具体的なハードウエア開発が始まり、2020年頃からは研究者向けのサービス提供が始まっている。ビジネス界では、大量のデータ分析や複雑なシミュレーション、AIや機械学習のレベルアップ/スピードアップ等でメリットがあると考えられている。

金融業界でも様々な分野での応用が考えられ、実証実験やベンダーとの共同研究を始めた企業も出現している。現在有望だと考えられている適用分野には以下がある:
・リスク計算の高度化
・ポートフォリオ/ヘッジングの最適化
・ローン審査/オンボーディングのスピードアップ
・ストレス・テストの高度化
・クロスセル機会の発見
・業務プロセスの短縮/スピードアップ
・不正検知/AMLの高度化

April 30, 2023

2022年11月のリリース以来、世界中の注目が集まるChatGPT(Generative Pre-trained Transformer)ですが、登録ユーザーは2か月で1億人を突破、現在では毎日5000万回のアクセスがあると推計されています。一方、ChatGPTのような大規模言語モデル(LLM:Large Language Model)をどうビジネスに応用するのかの検討もはじまっており、ここでは現時点での論議をまとめてみました。


■ 大きな関心と大きな懸念
ChatGPTは、最新鋭の自然言語処理(NLP:Natural Language Processing)技術であり、最も進んだ対話型インターフェースを提供していることから、その技術力に大きな称賛が寄せられている。一方、その完成度の高さゆえ、人間がだまされてしまう懸念や悪用が心配されている。

「ChatGPTが出す回答が不自然だ」或いは「不正確だ」との意見もあるが、そもそも人間の回答だと思わせることや、100%の正解をめざしたものではないはずだ。Googleなどの検索エンジンと同様、人間の活動を補完し効率化するツールだと考えたい。

April 11, 2023

日本では、独立系ファイナンシャル・アドバイザー(IFA)の登場とともに、その業務処理を支援するアウトソース・サービス:TAMP(Turnkey Asset Management Program)が注目されています。米国のTAMPは1990年前後に登場、RIA(Registered Investment Adviser)や証券会社のウェルス・マネジメント(WM(WM)サービスの進展を支えてきましたが、その守備範囲はWM業界の動きとともに変化しています。ここでは米国のTAMPの歩みをまとめてみました。


■ フィーベース・サービスとTAMP
米国の証券業界では、1990年頃より、証券売買を代行するブローカレッジ・サービス(ビジネスモデル:売買毎に徴収する手数料)に加え、顧客の資産形成をサポートするウェルス・マネジメント(WM)サービス(同:預かり資産額に応じたフィー課金)が注目されるようになった。

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