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独立系アドバイザー向けアウトソース・サービス:TAMP:米国での歴史と今後

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日本では、独立系ファイナンシャル・アドバイザー(IFA)の登場とともに、その業務処理を支援するアウトソース・サービス:TAMP(Turnkey Asset Management Program)が注目されています。米国のTAMPは1990年前後に登場、RIA(Registered Investment Adviser)や証券会社のウェルス・マネジメント(WM(WM)サービスの進展を支えてきましたが、その守備範囲はWM業界の動きとともに変化しています。ここでは米国のTAMPの歩みをまとめてみました。

■ フィーベース・サービスとTAMP
米国の証券業界では、1990年頃より、証券売買を代行するブローカレッジ・サービス(ビジネスモデル:売買毎に徴収する手数料)に加え、顧客の資産形成をサポートするウェルス・マネジメント(WM)サービス(同:預かり資産額に応じたフィー課金)が注目されるようになった。

大手証券会社は、WMサービスを開始するにあたり、顧客毎の投資戦略を立案する体制や、保有資産のポートフォリオ管理を行うマネッジド口座システムを自社で構築したが、中堅の証券会社や銀行の証券サービス部門は、これらの事業基盤作りは荷が重いことから、それらをカバーするアウトソース・サービス:TAMPが誕生した。ターンキーと呼ばれる所以は、TAMPがシステム基盤に加え、投資戦略の立案やポートフォリオ管理、レポーティング、コンプライアンス対応、FAのトレーニングなどもワンストップで提供したことによる。

■ RIAのTAMP利用
2000年代に入り、証券業界では、フィーベースのWMサービスがリテール事業の中心に位置づけられるようになり(証券売買は、オンラインによるセルフサービス化が進んだ)、中堅の証券会社でも、システムや投資戦略モデルを内製化する体制が確立されはじめたため、TAMPに対しても必要な機能のみ利用したいというニーズが出現した。TAMP各社は、サービスのアンバンドリングやオープン化、ホワイトレーベルの提供などでこれに応えた。

一方、中立責任のある独立系アドバイザーRIA(Registered Independent Advisor)は、米国では90年代から2000年頃に注目され始めた。当初は証券会社のFAが独立したごく小規模の企業(アドバイザーが1人から数人程度:”プラクティス”と称されることも多い)が多かったが、規模が拡大し業務が複雑化したRIAプラクティスではTAMPを利用するケースも増加した。2020年時点では、RIAが扱う個人金融資産は3-6兆ドル程度と推計されており(米国の総個人金融資産の10-20%程度)、TAMPはRIAを重要な顧客セグメントと位置づけている。

■ 新たな潮流とTAMPの変質
現在TAMP各社は、「提案書作成」「リスク許容度把握」「アセット・アロケーション」「ポートフォリオ管理」「取引処理/リバランス」「コンプライアンス」「レポーティング」などWM業務のアウトソース・サービスをモジュール単位で提供するのが一般的である。このような現状は、もはや「ターンキー」ではないとの論議もあるが、TAMPの名称は定着しており、変えられないようだ。

昨今のWM分野のトレンドとしては、消費者は、ETFやパッシブ運用の投信などローコストの金融商品への関心を高めており、一方ワイヤハウスでは、本社組織からFAに対してモデル・ポートフォリオの利用を推進するなど、FAが提供する付加価値を「資産運用管理」から「フィナンシャル・プランニングなどの顧客対応」へシフトさせようとしている。このような資産運用のコモディティ化に対応するWM業界の流れに対して、TAMPを利用している中堅証券会社やRIAも、各社の独自性を打ち出すためには、どのような新商品/新サービスを提供するか、また何をアウトソースするかを熟考している。TAMPのサービス内容にも更なる進展があると思われる。

(参照)
・アイテ・ノバリカ・グループ 2021年12月発行レポート「A TAMP by Any Other Name: Marketplace Evolution or Revolution?
・同 2023年3月発行レポート「The Small RIA: One Size Does Not Fit All