過半数が在宅勤務:Aite Groupの企業運営

コロナウイルスにより世界中で在宅勤務が急増しているが、筆者が勤務するAite Groupは、2005年の創業以来、在宅勤務中心で運営されてきた。2020年初時点で社員の7割が在宅だったが、現在では社員全員が在宅勤務となっている。ここでは、Aite Groupでの仕事の進め方やこれを支える仕組みを解説してみたい。
 

■ 会社概要
Aite Groupは、金融業界動向の調査会社で、本社はボストン、社員数は70名である(その他に外部の業務委託が約10名)。創業メンバー4名以外、アナリストが約45名、営業部門約10名、本社スタッフ(経理/総務/マーケティングなど)約10名の体制だ。

勤務場所は、本社勤務が15名、ロンドン・オフィス勤務が5名で、それ以外の50名は在宅勤務となっている。居住地は、イギリス、イタリア、スイス、オランダ、イスラエルからアメリカ各地(ニューヨーク州、ジョージア州、フロリダ州、ミシガン州、テキサス州、コロラド州、カリフォルニア州など)、カナダに散らばっている。管理者が在宅勤務で部下がオフィスに出社しているケースもある。オフィス勤務者でもいつ在宅勤務をしても構わない。

コロナウイルスによるロックダウンの結果、ボストンとロンドンのオフィスは閉鎖となり、3月16日以降、全員在宅勤務が続いている。
 

■ 仕事の進め方
アナリストの主たる業務は、業界動向を調査しレポートにまとめることだが、調査は電話インタビューが中心で、ベンダーにソリューションのデモして頂く場合も、Skypeなどのスクリーン・シェアを活用する。インタビューを受ける金融機関やIT企業もリモート取材に違和感はない。業界のコンファレンス等イベントでの講演依頼も多いが、Webinarなら自宅から登壇する。欧州在住のアナリストが米国の動向を担当したり、逆もある。

営業の場合、アウトバウンド営業も顧客からの問い合わせも、最初のやり取りはメールが一般的で、顧客の関心が高いと電話で会話し、更に必要ならば訪問することもあるという順序だ。営業担当者は、必ずしも担当地域に居住しているとは限らず、例えば、シカゴ周辺の顧客はフロリダ州在住者が担当し、西海岸の顧客はボストンとバーモント州在住者が2人で分担している。

社内コミュニケーションは、メールとスカイプ(メッセージング/通話)が基本で、人数が多いミーティングの場合はZoomを利用する。顧客とは電話かZoomを使う。これまで、年2回全社員が集まる「全社会議」がボストンで開催されていたが、今後の予定は未定だ。
 

■ システム装備
社内システムはすべてSaaSベースだ。顧客管理と業務関連はSalesforce.com、データやレポート類はBox.comに格納されている。その他、Office365(文書作成に加え、スケジュール管理、メール:セールスフォースとはAPI接続)、Bloomfire(社内業務手順の共有)、Calendly(顧客からのアポイント申し込み)などを組み合わせている。Webサイトは外部ホスティングを利用、更にこれらIT全体の管理/ヘルプデスクも外部にアウトソースしている。

社員には、会社仕様のラップトップPCが配布され、オフィス勤務者が在宅勤務をする場合、PCを自宅に持ち帰る。パソコンのアドミニストレーター権限はIT管理者(アウトソース先)が持っており、例えば、本人が外部アプリをダウンロードする際には、IT管理者の承認/サポートが必要となる。これら社内業務用SaaSアプリケーションは、シングル・サインオン(Okta)経由で利用する。個人所有のスマートフォンからも、メールを読んだりBox.comにアクセスしてファイルを閲覧することは可能だ。
 

■ リモート・ワークのメリットを生かす
日本でも在宅勤務が推進され、パンデミック後も定着するとの見方が多い。筆者は、アイテグループでの在宅7年の体験から、在宅勤務に関して以下のように感じているがどうだろう。

  1. オフィス・ワークが中心の会社ならば、業務の流れやシステム・セキュリティをリモート・ワークを前提にデザインすることで、支障のない仕組みが構築できる。
  2. メール/電話/ビデオは、Face-to-Faceの代替手段ではなく、コミュニケーション手段はそれしかないとの前提で様々な工夫をすれば仕事に支障はない。
  3. 現在は、在宅勤務/リモート・ワークのメリットを「ワーク・ライフ・バランス」や「通勤時間の節約」「出張の削減」等として捕らえることが多い。今後は更に踏み込んで、「居住地/勤務地にとらわれず、最適なメンバーを雇用しチームを構築できること(人の質/コスト/スピードの両立)」や「(時差はあるが)手軽にグローバル展開が可能」などを、リモート・ワークならではの優位性を打ち出すことが重要になるだろう。

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