コロナ・ウイルス蔓延:金融機関の課題とチャンス

コロナウイルス蔓延にともない、米国ではカリフォルニア州やニューヨーク州などで外出禁止令が出されている。この急激なビジネス環境の変化に対し、アイテグループでは、金融機関が直面する課題や新たなチャンスをまとめた緊急レポートを発行した。ここでは、そこから4つの課題をご紹介する。
アイテ・グループ緊急レポート:COVID-19: Challenges and Opportunities in Financial Services
# 当レポートでは、上記以外の様々な課題やビジネス・チャンスも取上げている(レポートはどなたでもダウンロードいただけます)。
 

■ デジタライゼーションへの取組みが明暗を分ける
米国では「人と接する際は、最低6フィート(180cm)離れること(Social Distancing)」が奨励され、不要不急のビジネスは営業停止が要請される中、金融機関への来店客も激減している。これが長期化すれば、新規口座開設や各種手続きをデジタル環境だけで処理できるかどうかが、金融機関のレピュテーションに大きく影響する可能性がある。また、顧客との円滑なコミュニケーションが通常時以上に重要となる中、ビデオチャットなど非対面手段(使いこなし方などのソフト面も含めて)の活用にも注目が高まっている。

社内の事務処理プロセスも、社員の出社禁止が長引けば、在宅から対応できるかどうかが重要となるだろう(例えば、生保/損保のクレーム処理など)。一方、バックオフィスの事務処理を受託しているアウトソース・ベンダーは、このような環境でも問題なくサービスを提供できることを示せれば、今後のビジネス展開は明るいものになると思われる。
 

■ 銀行のローン事業が直面する課題
景気の後退が現実のものとなる中、焦げ付いたローンを不良債権として処理するケースが急増すると考えられるが、米国では2008年の金融危機以降好景気が続いたため、各行とも不良債権処理に詳しい行員の多くが既に退職してしまっておりノウハウ不足が懸念される。

一方、運転資金の確保などで新規ローン申込みの増加が想定されるが、ビジネス環境は急変しており、これまでどおりのプロセスでは適切な審査ができるとは限らない。更に、審査用に提出される資料の中に意図的に改変したデータを紛れ込ませる可能性も高まるはずで、こちらでもノウハウをどう補うかが喫緊の課題となっている。
 

■ 投資環境の激変と個人向け資産管理サービス
米国のほとんどの証券会社が、2019年11月以降、株式取引の手数料無償化に踏み切った。これを受けて自分の判断で売買を行う個人投資家からの注文が増加しているが、コロナウイルスによる投資環境の激変以降もその傾向が続いている。ただ、株式市場の乱高下の結果、大きな損失を抱えてしまう個人投資家が増えるとの懸念が強まっており、中長期的には投資アドバイス関連のビジネス拡大に結びつくと思われる。

また、2015年前後から始まったロボ・アドバイザー・サービス(アルゴリズムによるポートフォリオ管理サービス)にとっては、今回が初めての景気後退とになる。運用成果に関する顧客へのメッセージ発信や透明性の拡大、更には対人サービスへの誘導など、試練とビジネス・チャンスが入り混じった時代に突入すると思われる。
 

■ カード利用に対する不正検知アルゴリズムの更新
昨今、ECサイトでのカード決済(CNP:Card Not Present)の不正検知には、既に人工知能が広く活用されている(個々人のカード利用パターンに基づき不正の可能性を推論する)。

コロナ・ウイルスにより外出が抑制される一方、ネット・ショッピングが急増しているが、人工知能による不正検知は、これまでの購買パターンの分析から本人かどうかを判断する仕組みなので、本人であっても普段と異なるパターンを認識すれば、不正と判定してしまう可能性が高まるため(フォルス・ポジティブ)、アルゴリズムのチューニングが必要となる。ただ、それを狙った不正犯罪も増えると思われ、その対策も欠かせない。

 

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