パンデミックの「お陰で」ユーザー倍増:ホールセール・バンキング・ベンチャー:AutoBooks

フィンテック・ベンチャーと言えば、ネオバンクやロボ・アドバイザーなどリテール分野での注目が集まっていますが、ホールセール・バンキングに特化したフィンテック企業も出現しています。アイテ・グループでは、「Wholsale Banking Fintech Spotlight」としてこの分野の調査レポートを四半期毎に発行していますが、ここでは最新号からAutobooks社を取り上げました。
アイテ・グループ・レポート:Wholesale Banking Fintech Spotlight: Q3 2020


■ アイテ・グループのWholesale Banking Fintech Spotlightレポート
アイテ・グループのホールセール・バンキング・チームでは、この分野に特化したフィンテック・ベンチャー企業を調査し四半期毎にレポートを発行している。2020年第3四半期号では、ビジネス・プロセスの改善やカスタマー・エクスペリエンス改善を目指す5社を取り上げた。いずれも金融機関と競合するのではなく銀行のパートナーとして企業顧客向けのソリューション提供を狙っている。
・Autobooks社:スモール・ビジネス向けペイメント/キャッシュフロー・マネジメント・プラットフォーム
・Form3社: クラウドベースのペイメント・サービス・プラットフォーム。ロイズ銀行、バークレーズ銀行、ネーションワイドなど英大手金融機関が共同出資
・Remitter社: 人工知能を使ったSMB向けローン返済管理プラットフォーム
・SpendLabs社: 法人カードと経費管理
・Terafina: 法人顧客の新規口座開設プラットフォーム(デジタル/店舗/コールセンターすべてに対応)

以下「Autobooks」の概要を紹介する。


■ スモール・ビジネス向け資金管理ソリューション:Autobooks社
(ビジネスの課題)
金融機関のビジネスは、大きく個人向けリテール事業と法人向けホールセール事業に別れるが、後者は、ある程度の融資ビジネスが期待できる規模の企業を対象としてサービスが組み立てられており、個人経営やマイクロ・スモール・ビジネスのニーズが抜け落ちていることが多い。結果、SMB企業は、不満を持ちつつも個人向けサービスを利用しているケースが多いと言われている。

ただ、これらSMB企業でも資金管理(請求から入金までのトラッキング、支払い管理、キャッシュフロー管理)は、企業運営に欠かせない業務であり、専任の経理スタッフを置けないことも多いことから「社長」自らが行っているケースが大半である。コロナ・パンデミックを背景に、債権回収はより重要となり、スモール・ビジネスのニーズに特化したソリューションがより一層求められていた。

(Autobooksのソリューション)
2015年創業のAutoBooksは、スモール・ビジネス向け(主に個人事業主/マイクロ・ビジネス)に以下を提供するクラウド・サービスだ。
・キャッシュ・フロー管理
・デジタル請求書送付と入金管理
・支払い管理ACH送金/カード払い)
・会計システムへの接続(トランザクションの自動反映)

(Autobooksの特徴)
・Autobooksのソリューションは、銀行の付加価値サービスとして一体化できるデザインとなっている。
・Autobooksでは、ソリューション提供を金融機関経由でのみ行っている(銀行側ではモバイル・アプリやWebサイトの追加機能と位置づけられる)。
・銀行にとっては、システム面での事前のインテグレーションが最低限で済むことから、Autobooksの採用を決めれば、1-2ヶ月でサービス・インできる。
・SMB企業にとっては、取引銀行がAutobooksのサービス提供を始めれば、初期設定をするだけですぐに利用可能となる。
・Autobooksの金融機関に対する課金は、ユーザー数に応じた定額料金+レベニュー・シェアである(金融機関にとってリスクが低い)。
金融機関は、スモール・ビジネスが必要としているサービスをローコスト/ローリスクで導入できるので早期の顧客満足度向上/顧客とのリレーション強化が狙え、実務面でも、滞留する資金残高増/各種フィー収入増/貸付の可能性などが期待できる。

(成果)
Autobooksを提供する金融機関は、2020年初時点で35行だったが、2020年上半期に一挙に25行が採用を決定、ユーザー銀行は60行となった。金融機関のサービス提供開始後、サインアップするSMB顧客も順調に伸びているという。これらの背景には以下のような理由が考えられる。
・金融機関:  コロナ・パンデミックにより、支店業務のデジタル化が急務となったが、Autobooksによりローリスク/ローコスト/短期間で適切なサービスが提供できる。
・スモール・ビジネス:  パンデミックでビジネス形態が大きく変化して経験値が通用しなくなり、計数把握がより重要になった。またパンデミック下、店頭へ行きたくない(デジタル・ツールに頼りたい)。

最大手ユーザーのTDBank(預かり資産額:全米10 位)でも8月にサービス・インした。金融機関/SMB顧客とのWin-Win-Winを狙ったAuobooksのソリューションが、今度どの程度浸透していくか注目しておきたい。
 

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