金融機関IT部門:コロナ後の”ニュー・ノーマル”をデザインする

コロナ・パンデミックに際し、米国では警察/病院/公共交通機関などのエッセンシャル・ワーカー以外には在宅勤務命令が発令されました。金融機関も最低限の支店業務とATM、データセンター以外は、コールセンターを含むほとんどの部門が在宅勤務を余儀なくされ、システム部門はその対応に奔走しました。これらが一段落した今、ここまでの行動を振返ってまとめ、今後の発展につなげる必要があると考えられます。

アイテグループでは、あるコミュニティ・バンクのパンデミック下での対応をインタビューで振り返り、そこからの示唆を「A CIO’s Story in the Time of COVID-19」としてまとめました。


■ 某コミュニティ・バンクの事業概要とIT部門
アイテ・グループがインタビューした中西部の某コミュニティ・バンクは、預金額20億ドル/支店数26箇所/行員550名と、日本では下位の信用金庫クラスである。ただ、通常業務以外に他の金融機関90行に住宅ローン事業のアウトソース・サービスを提供(貸出額30億ドル)しており、規模の割りには業務は複雑だ。

IT部門は、CIO以下20名で、戦略立案から日々のオペレーション、160社に達するアウトソース・ベンダー(一部の業務ソリューションや不正アラート管理、コンテンツ管理などのソリューション・ベンダー、ハードウエアベンダーなど)の管理を行っている。2020年5月には、以下の新サービスのリリースを予定していた。
・リテール顧客向けオンライン・サービス/モバイル・アプリの更改
・ホールセール顧客向けオンライン/モバイル・トレジャリー・マネジメント・システムの更改
・リース事業部門でのEシグネチャーとクラウド・ストレージの導入


■ パンデミック下の行動
(在宅勤務へのそなえ)
・米国では、3月中旬に各州でロックダウン命令がだされ、オフィスの閉鎖が義務付けられた。当コミュニティ・バンクでは、1月の時点で、中国のパンデミックの影響を鑑み、本年度に購入を予定していたハードウエア全量を前倒しで発注した。ところがPCを製造する中国の工場が、コロナ蔓延のため閉鎖され納期が確定しないことから、2月に入り、指定ベンダー(HP)かどうかを問わず数量確保を優先、また、在宅勤務が避けられないとの判断から、これらPCの在宅勤務への転用準備を始めた。

・同コミュニティ・バンクでは、在宅勤務時にはRSA Tokenによる二要素認証用を実施していたが、これも追加入荷の予定が立たないことから、3月初にSaaSを使った二要素認証ベンダーの評価を実施、Cisco Duoの採用を決めた。コールセンターも全面在宅勤務を想定し、CiscoのSoftphoneを増強した。対外送金を行うSWIFTやFed Wireへの接続は、専属PCからのアクセスが義務づけられているが、担当者が在宅からオフィスにある専属PCへアクセスできる仕組みを整えた。

・同コミュニティ・バンクでは、在宅勤務を行う社員との間では、以前から「Distributed Worker Agreement」を締結していたが、この内容を最新状況に合わせて修正した。

(在宅勤務開始後の対応)
・社内向けヘルプデスクは、在宅勤務に切り替わった社員からの問い合わせ増に備え、通常の2名から8名体制とした。
・顧客向けコールセンターも、全面在宅勤務に切り替わったが、顧客からの問い合わせのピーク時間帯と問い合わせ内容が以前とは大きく変わったことから、それに合わせてスタッフのシフト時間も見直し、増員することなく顧客の待ち時間最小化を目指した。


■ 今後の課題
半年続いた在宅勤務での経験を踏まえ、当コミュニティ・バンクでは以下を検討課題と認識している。

(Distributed Worker Agreement の見直し)
・在宅環境におけるPCへのプリンター接続など、同Agreementに違反する事象を検知することはできても、どう取り締まる(Enforceする)か?
・顧客の個人情報(PII)が家族の目に触れるなど、漏洩リスクに対してどのような対応策を取り入れるか(Agreement 強化に加え、現在業務アウトソース先に適用しているルールが一つの参考事例となると考えられている)。

(デジタル・トランスフォーメーション/モダナイゼーション)
・クラウド活用:同コミュニティ・バンクでは、パンデミック下でクラウド・ベースの二要素認証やEシグネチャー/ストレージを成功裏に導入できたことから、より広範なクラウド利用の機運が出てきている。
・従業員再配置:パンデミックを受け、顧客のデジタライゼーション(オンラインやモバイルアプリ利用)が進んで来店客が減り、コールセンターでもピーク時間帯や問い合わせ内容が変化してきた。これらの状況を見極めながら、職員の再配置やオフィス/支店/在宅の分担見直しを柔軟に行える体制を構築することが必要だと考えられている。
・リモート環境での業務効率を高めるための各種ツール(コラボレーションウエアなど)の必要性も認識されている。

「コロナ後のニュー・ノーマル」との表現がしばしば見受けられるが、企業は、ここまでの経験をもとにニューノーマルの具体的な内容を詰め、軌道修正を始める時が来たように思われるがどうだろう。

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