機関投資家が開発した企業評価ベンチマーク:SDIアセット・オーナー・プラットフォーム

昨今SDGs(サステイナブル開発目標)が注目されていますが、欧州の機関投資家が、SDGsに積極的な企業を評価するためのベンチマーク「アセット・オーナー・プラットフォーム(SDI‐ AOP)」を考案しています。アイテ・グループでは、この取り組みを「The SDI Asset Owner Platform: Sustinable Investing and SDG Alignment」としてレポートにまとめています。


■ ESGと機関投資家
機関投資家/個人投資家ともども、投資先の選択の際にESG(環境(Environment)社会(Social)ガバナンス(Governance))の観点から企業評価を行うことが一般化している。ESGは、企業経営に対して、財務面だけでなく社会面/環境面への配慮も必要であるとする概念で、国連が2006年に責任投資原則(PRI: Principles for Responsible Investment)として金融業界に提唱したことから普及が始まった。

機関投資家は、説明責任の観点から企業のESGに対する取り組みの数値化やレーティング情報を必要としていたが、ブルームバーグやMSCI、Revinitivなどのデータベンダーが、客観的な指標を情報として配信する体制を整え、ESG投資の普及を後押しした。


■ SDGsと機関投資家
一方、SDGs(Sustainable Development Goals)とは、2015年に国連総会で採択された持続可能な社会構築のための目標17項目である(2030年達成を掲げている)。17項目は、ESGで提唱した内容に加え、貧困/紛争/格差/海洋資源/差別など人類が直面する課題を含めた設定となっている。

ESGと近い目標(「7番:クリーン・エネルギーの確保」や「13番:気候変動への具体策」「5番:ジェンダー平等」など)もあるが、更に大きな視点での取り組まなければならない目標「1番:貧困撲滅」「4番:質の高い教育」「17番:目標達成に対する国際間協力」など)もある。国連では、企業だけでなく地球上のすべての個人が取組むべき目標だとしている。

機関投資家は、EGSに加え、SDGsの観点から経営経営を評価しなければならないが、どのような企業活動がSDGs達成に結びつくのか、コンセンサスの得られたベンチマークはまだ存在しない。この現状に対して、2020年オランダの運用会社APGとPGGMが、機関投資家主導の評価指標「SDI-AOP:Systainable Development Investement Asset Owner Platform」を考案し利用を開始したと発表した。


■ SDI Asset Owner Platformの仕組み
SDI-AOPのアプローチは、「企業が提供している製品やサービス」がSDGs達成に貢献するかどうかを年次報告書などの公開データから人工知能とアナリストの評価で以下の3段階に分類するものだ。
・Majority:企業売上の50%以上がSDGs達成に貢献する製品/サービスから構成されている
・Decisive: 企業売上の10%から50%がSDGs達成に貢献する製品/サービスから構成されている
・Non-SDI:SDGs達成に貢献する製品/サービスからの売上は10%以下である

ESGレーティングの多くは「企業の行動」が評価対象となっているが、ここでは「SDGsに貢献する製品/サービスの売上割合」としているところが興味深い。2021年1月に発表されたグローバル7888社に対する評価は、以下のとおりであった。
・Majority:1037社
・Decisive: 616社
・Non-SDI:6235社
また、各企業の分類に対する推計の確実性が1-5で示されるのも興味深い。


■ SDI-AOPに対する見方
SDI-AOPでは、当初の創設メンバー2社に加え、オーストラリアとカナダの運用会社も加わり、同指標の普及を図りたいとしている。アイテ・グループでは、改善の余地はあるものの、以下の観点からこの取り組みが広く普及する可能性もあると認識している。
・機関投資家業界は、SDGsに対する客観的なベンチマークを必要としている。
・SDI-AOPの取り組みは、透明性の高いアプローチである(データ入手方法や評価アルゴリズムが公開されている)。
・SDI-AOPは、機関投資家が仕組みを考案しNPOで運営、かつ創設メンバー企業がユーザーでもあることから、信頼が得られやすいと思われる。
SDGsのベンチマークに関しては、SDI-AOPも含め今後の動向に注目しておきたい。

 

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