AI活用で社債取引の電子化を促進:LTX

市場取引が活発な株式や為替(FX)では電子取引が広く普及していますが、流動性が高くない社債の場合、機関投資家は証券会社を通じて取引相手を探す必要があります。特に発行から時間が経過していたり売買単位が大きい場合、取引相手を見つけるには時間を要し、価格がかけ離れてしまう可能性があります。人工知能を使ってこの課題に取り組むLTX社の話題です。


■ 米国市場における証券トレーディング電子化状況
米国の金融市場では、株式や先物、為替、米国財務省証券などの取引の80-90%が電子化されている。一方、社債取引は証券会社を通じた相対取引が中心で、電子取引の割合は40%前後に留まっている。この背景には、大部分の社債は機関投資家保有で流動性が低く「取引相手を見つけにくい」、また見つかっても「売買価格が折り合わない」という根本的な問題がある。

加えて、証券会社が機関投資家から社債を買取って一旦「自社在庫」とし、のちに売り先を探す方策もあるが、金融規制の強化によりこの手法によるビジネスは縮小している。


■ LTX:AIを活用した社債取引市場
2019年に創業したLTX(Broadridge社傘下)は、AIを活用して取引相手を探す社債取引プラットフォームだ。利用者(バイサイド企業/証券会社)は、売買したい社債の内容(銘柄識別番号(CUSIP)/売買別/希望数量/希望価格)を匿名で「Liquidity Cloud」に掲載する。

同一銘柄の取引希望がある場合、LTXのマッチングエンジン「Actionable Cloud Matching Scores」が、取引相手となる可能性が高い順に反対注文をリアルタイムで表示する(スコアリングには、価格差/希望数量の差/過去の取引履歴などが考慮される)。同一銘柄の取引希望がない場合でも、似た特性の社債(業種/利払い/償還期限など)の反対注文が、やはりスコア順に表示される。

これらの情報を基に、利用者は取引の可能性のある相手と交渉を開始することができる。バイサイド企業は証券会社経由での取引となるが、旧来のRFQに加え、複数の取引相手と価格交渉を行えるRFXという仕組みも提供される。交渉過程の価格は公表されるため、よりよい価格が提示される可能性も高まるという。また、バイサイド企業が利用しているOMS/EMSとの接続も考慮されており、既に主要ベンダーとのインテグレーションが行われている。


■ 参加者は増加中
2023年4月現在、LTXにはバイサイド企業90社(大手企業(BlackRock、MetLife、PIMCO、American Century等)を含む)、証券会社30社が加盟している。Liquidity Cloudには毎日平均して300億ドル相当の取引希望が掲載されているという。成立する取引が増えれば、参加者が増加し注文の掲載が増えるという好循環が始まるだろう。OMSベンダーとの接続が増えればこの好循環が加速すると思われる。LTXの利用動向に加え、現在はTreasuryが中心の債券トレーディング・プラットフォーム各社の動向にも注目しておきたい。


(参照)
・アイテ・ノバリカ・グループ 2021年5月発行レポート「Innovations in Execution Venues: LOOKING TO REIGNITE MARKET GROWTH
 

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