銀行のデジタル・トランスフォーメーションを支えるシステムの稼働環境/開発環境を考える

様々なビジネスでデジタル・トランスフォーメーション(DX)が進行する中、金融機関の取組みも待ったなしの状況です。ただDXを本格化させるためには、それを担えるシステム・インフラの整備が必須と考えられます。アイテ・ノバリカ・グループではリテール・バンキング分野での考え方をレポート:CIO/CTO Checklist: Bank Software Development Choicesとして発刊しており、ここではその概要をご紹介します。
 


■ 銀行を取り巻くビジネス環境/システム環境
米国のリテール・バンキング事業では、主要顧客層がミレニアル世代/Z世代へ移行する中、デジタル・バンキングの強化(DX)が最大の課題であり、ストレスのないカスタマー・エクスペリエンスこそが差別化施策と考えられている。そのためには、使いやすいアプリやWebサイトの機能拡張を短期間で開発しタイミング良く投入する必要があるが、米国の金融機関の大多数は、大手ベンダーが提供する従来型コアバンキング・ソリューションに依存しており、迅速な対応が可能なシステム環境とは言い難いのが現状だ。

一方、クラウド・コンピューティングやアジャイル開発、オープンソースなど、アプリケーションを短期間に開発し迅速で安価に提供できるシステム環境/ツール群が普及してきた。金融業界でもこれらのテクノロジーをフル活用したフィンテック企業が登場し、加えてオープンバンキング/API接続などの新コンセプトが広がりを見せている。既存コアバンキング・ベンダーもフィンテック企業群と連携してエコシステム構築を推進するなど、金融機関の選択肢が拡大している。


■ 将来を見据えたシステム稼働環境/アプリケーション開発環境
このようなビジネス動向/テクノロジー動向を受け、銀行のリテール・ビジネスを支えるシステム稼働環境/開発環境は今後どうあるべきか、各金融機関は、多数の選択肢の中から自行の方針を整理する必要がある。考慮すべき項目は多々あるが、ここでは「クラウド・コンピューティング」「オープンソース」「ベンダー・エコシステム」にどう取り組むべきか、考え方の整理方策をご紹介する。

(1)クラウド・コンピューティング
多くの金融機関が、既にメールサーバーやCRMの分野でSaaSを利用し、一部の業務やシステム開発にはIaaS環境を活用している。まだ少数派だがコアバンキング・システムのクラウド移行を決定した金融機関もある。今後クラウド利用の増加は間違いないと考えられることから、既存システムとクラウドをまたがるシステムの管理方策や既存アプリとのインテグレーション方針、社内IT利用ポリシーの見直し/整理を進める必要がある。

(2)オープンソース・ソフトウエア
最新のシステム開発ツールやクラウド管理、セキュリティ対策などの分野では、オープンソース・ソフトウエアが広く活用されている。一方、金融機関はオープンソース・ソフトウエアの利用に消極的だった過去の経緯から、ライセンシングに関する理解や社内の活用ルールが整備されていないケースも見受けられる。ただ今後は、前述のクラウドをはじめ、主流となるシステム環境/開発環境でオープンソース・ソフトを必要とするケースが多々あり、それならば社内の利用ルールを積極的に整備すべきだと考える。

(3)ベンダー・ソリューション/ベンダー・エコシステム
米国大手コアバンキング・ベンダーのソリューションは、大部分がレガシー環境で稼働しており、それを利用している金融機関が外部のデジタル・ソリューションとインテグレーションするにもかなりの労力/期間が必要となる。そこでベンダー各社は、複数の主要フィンテック企業(モバイル・アプリやデジタル・レンディング、不正アラートなどを提供)と提携し、あらかじめAPIの開発を進めている。

これらの取組みは「アプリケーション・エクスチェンジ」「アプリ・マーケットプレース」「アプリ・エコシステム」などと称され、その取り揃えの中から選択すれば、デジタル・ソリューションを短期間で導入できるが、ベンダー・ロックインが強まるという副作用もある。ユーザー金融機関は、ベンダーと適切な距離を保つために、「エコシステム」活用に関する社内ルール作りが必要だと考える。


■ 人材の確保
人材に関する課題も軽視できない。多くの銀行は、レガシー環境でシステムを運営・保守するためのITスタッフをそろえているが、彼らが新しいテクノロジーに対応できるメンバーだとは限らない。システム部門は、現状のスキルセットと今後導入されるテクノロジーを活用するために必要となるギャップを把握し、研修計画や追加採用などをすみやかに進めなければならない。

ここで説明したシステム環境に関する考え方は、デジタル・トランスフォーメーションをスピードアップするためのいわば「事前準備」であり、具体的な「力仕事」はその先にあるはずだがどうだろう。

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