金融サービスにおけるデジタル・コミュニケーション・ツールの活用と今後

2020年春のパンデミックとそれに伴うロックダウンの結果、米国金融機関の顧客サービスにおいては、ビデオ会議やチャットなどデジタル・コミュニケーション・ツールの活用が進みました。コロナ・ワクチンの接種が広まりパンデミックの終焉が視野に入る中、今後を見据えたデジタル・コミュニケーション・ツールに関する金融機関の認識をまとめてみました。


■ 金融サービスにおけるデジタル・チャネル利用
米国では、2020年3月にコロナ・パンデミックによるロックダウンが本格化、金融機関店舗の一時閉鎖や入店時の事前アポイントが通常状態となった。ロックダウン直後は、コールセンター利用が急増したが、2020年夏以降は、金融機関各社がデジタル・チャネルの利用を推進した結果、オンライン利用やチャットボット、ビデオ会議の利用が大幅に増加した。バンクオブアメリカ・メリルリンチでは、デジタル・チャネルの利用状況を以下のように発表している。
・個人口座6600万口座のうち5200万人がオンライン登録を行い、うち4000万人が常時オンラインを利用している(2021年3月現在)
・バーチャル・アシスタント(チャットボット)の登録ユーザーは、2021年3月に1950万人に達し、2019年末の2倍となった。1年間の利用件数も1億回を超えた。
・オンラインによる面談アポイント・サービスは、2020年第3四半期で70万回利用された 。 
・メリルリンチ・アドバイザーのビデオ会議利用は、2020年第3四半期で10万回と前年の7倍となった。


■ コロナ後を睨んだデジタル・コミュニケーション戦略
コロナ・ワクチン接種が広まりパンデミックの収斂が視野に入る中、金融機関各社では、パンデミック後の顧客の行動パターンがどうなるか(デジタル・チャネルが定着するのかどうか)を注目しつつ、今後のアプローチの検討を開始している。
・銀行各社は、店頭に来る顧客が減少したことで店舗削減を進める意向が強い。店舗から遠くなる顧客をビデオ会議などのデジタル・ツールでカバーするためには何が筆要だろうか?
・証券業では、特に富裕層顧客でFace-To-Face面談が欠かせないが、パンデミックを経た結果、デジタル併用(ハイブリッド)が増加すると思われる。一方マス富裕層へは、デジタル/ヒューマンを組み合わせたハイブリッド施策を推進し、如何にスケールを確保するかが重要になる。それぞれどのような道具立てが必要だろうか?
・どのような施策に対しても、デジタル・ツールを活用できる人材の採用/既存社員のトレーニングが必須となる。最終的には顧客対応部門における生産性向上を目指す必要がある。


■ ハイブリッド環境をサポートするツールの導入
ただ現実的には、ハイブリッド環境の正解があるわけではなく、顧客ニーズ/営業現場の意向を確認しながら試行錯誤が必要となる。現時点では、以下のようなソリューションの導入を始めた金融機関が出現している。
・顧客との書類のやり取りに関し、電子サインだけでなく、署名した書類を電子的に保管/いつでも閲覧できるVault(金庫)サービスの提供
・提案書の電子化(PCやスマホで読むことを前提とし、魅力的で分かり易いマルチメディア提案書を簡単に作成できるツールなど)
・システム・ソリューション導入の前提としてのセキュリティ強化(Webサイトやモバイルアプリにおける、バイオ・メトリックス認証や二要素認証の導入)

いずれも良好な顧客エクスペリエンス/社員エクスペリエンスの提供が大前提であり、ビデオ会議やオンライン・アポイントはゆり戻しがあるとの意見もある。パンデミック後のデジタル・コミュニケーション・ツール利用動向に引き続き注目しておきたい。
 

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