音声応答によるカスタマー・サービス:Bank of America「Erica」のコロナウイルス対応

Bank of Americaでは、AIを活用した音声応答サービス「Erica」によるカスタマー・サービスの自動化を進めてきましたが、2020年初からのコロナウイルス蔓延に伴う顧客からのコンタクトの増加にも、その威力を発揮しています。


■ 「Erica」開発の経緯
リテール銀行業務の自動化の歴史を振り返ると、「現金の扱い」「トランザクションの扱い」は、ATMとオンライン・バンキングの普及により顧客のセルフ・サービス利用が定着してきた。一方「問い合わせ対応」に関しては、支店窓口からコールセンターへの進化はあったものの、「自動化」「セルフ・サービス化」には程遠い。

Bank of Americaでは、2016年にAIを使った自動音声サービス「Erica」の開発計画を発表、2018年5月にはモバイル・アプリに組み込んで正式リリースした。当初は「支店/ATM検索」「過去の取引検索」「支店でのアポイント」「事前登録された口座への)振替/送金」などだけだったが、今日では、「毎月の支出平均額は?」「自動引落しされている出費は?」「クレジットカード取引の苦情受付け」「ATMカードのロック(利用一時停止)」などにも対応できる。

Ericaを利用するユーザーも増えており、Bank of Americaに口座を持つ顧客6600万人(2020年第1四半期(2020年3月末))のうち、モバイル・アプリのアクティブ・ユーザーが3000万人あり、その中で1220万人がEricaを常時活用しているという。この人数には、コロナの影響は部分的にしか反映さておらず、今後の伸びが注目されている。


■ シャットダウンに伴うErica利用の変化
コロナ・ウイルスによるシャットダウンに伴い、Ericaに対する質問にも変化が生じている。「クレジットカードの支払い猶予の依頼(多くの金融機関が対応を発表している)」「連邦政府の(スモール・ビジネス向け)給与保証プログラム(PPP)」「連邦政府の個人向け現金給付プログラム」に関する問い合わせが、コロナ関連問い合わせのトップ3だという。

Bank of Americaでは、EricaのAIに対して、6万種類によぶコロナ関連の「想定Q&A」「新用語」をつかって機械学習を実施し、その後もチューニングに努めている。コールセンターでもEricaで対応できない問い合わせ(モバイル・アプリやEricaの操作方法なども含む)に対して、顧客とのビデオ・コールによる対応を強化している。


■ カスタマー・サポートの自動化:今後の方向
Bank of Americaでは、コールセンター(エージェント2100人)とモバイル・アプリ開発(400名+Erikaチーム20名)を同一のAdvanced Solutions and Digital Banking部門下におき、カスタマー・サーポートの改善とAIやモバイル・アプリを使った省力化を一体で進める体制としている。その中心となる考え方が「モバイルアプリや音声応答の機能改善を常時継続していくことが、カスタマー・エクスペリエンス面での競争力強化につながる」とのコンセンサスだ。

Bank of Americaのモバイル・アプリ(含Erica)は、JD Powerの金融機関モバイル・アプリ・ランキングやJavelin Researchのモバイル・バンキング・アワードでトップクラスの評価を得ている。同行では、現在、いかにすればEricaを多くのユーザーに試してもらえるかに腐心しており(1回でも試してもらわないことには、利用が始まらない)、この視点から「コロナはEricaを試してもらえるチャンス」と見ているようだがどうだろう。


(参照)
・American Banker誌 2020年6月2日記事「'Aha' moments are David Tyrie's job at BofA」
・Business Insider誌 2020年4月16日記事「Bank of America's Erica sees growth as bank prepares for effects of the corona virus crisis」
・Mobile Payment Today 2019年10月24日記事「Bank of America enhances mobile banking app, including Erica digital assistant」
・CBR Online 2020年12月12日記事「"Erica" Hits 10 Million Users」

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