2021年金融業界の注目点(その3):保険業界の動向

アイテグループでは、毎年年初に金融業界各分野の注目点を「Top10Trendsレポート」として発刊していますが、損害保険と生命保険分野の注目点を「Top 10 Trends in P&C and Life Insurance, 2021: Digital and Data Go to the Next Level」からまとめてみました。

 

■ パンデミックの影響
コロナ・パンデミックを受けて、生損保業界のビジネス(個人向け損害保険、企業向け損害保険、生命保険、年金商品)でも様々な影響がある。ただ、保険業界は、以前から新たなテクノロジーやデータ活用した業務革新や使い勝手の向上、効率化、意思決定精度の向上などを進めており、今後はそのスピード・アップが予想される。ここでは、特に注目される取り組みを、デジタライゼーションの視点からとりあげた。

■ 損害保険の注目分野
(保険金請求アプリ)
保険金請求は、テクノロジーの活用でカスタマー・エクスペリエンス向上が狙える分野と考えられている。自動車保険でも火災保険/家財保険でも、顧客が保険金を請求する場合は、交通事故や火事などの被害にあった直後であることが多く、わずかな対応の差が保険会社の評判に大きく影響する。ただ、保険会社にとってはコストへの配慮も必要となり、如何にテクノロジーを活用するかが重要だ。

米国では、交通事故の第一報を保険会社にテキスト・メッセージで送れば、チャットボットが自動的に対応する仕組みが導入されはじめた。写真やビデオを活用して被害状況の報告をいかに簡単に行えるかも重要な部分だ。第一報に続いて顧客に保険金請求アプリをダウンロードしてもらい、保険金申請から審査、入金までの流れを分かりやすくガイドするアプローチ(かつ人的労力も最小化できる)も登場している。

(自動車利用の変化とデータ活用)
パンデミックは、個人の自動車利用にも変化を与えている。コロナ以前から進んでいた配車サービス(個人が自家用車でパートタイムのタクシー業務を行う:ウーバー等)や自家用車を使った出前/宅配サービスの普及/ギグ・ワーカーの増加を受けて、自家用車の走行距離や利用形態が変わり始めていたが、パンデミックによりそれが速まった。一方、在宅勤務で通勤が無くなり走行距離が大きく減少する自家用車も増えている。

このような個人の生活環境が変化する中、テレマチック機器やスマホを使った走行距離保険の利用が増加している。更に、自動車保険料の算出に際し、これまでの計算モデルや利用しているデータだけでは、公正な料金が計算できないのではないかとの論議もある。各個人の運転の「クセ」も含め、多様なデータ活用し新たな現実に即した保険金算出アルゴリズムが考案されると思われる。

 

■ 生命保険の注目分野
(医療データの活用)
プライバシー面の懸念はあるものの、生命保険の契約時に医療データを活用できれば様々なメリットが考えられる。これまでの論議は、保険加入時の健康診断を省略する手段(=顧客は手間が無くなり保険会社はコスト削減が可能)だった。昨今は、申込み時にリアルタイムに医療データにアクセスできれば、「(健康な人ならば)同じ保険料で契約額増額の提案」や「保険料を確定し、即時契約する」、更に「100%デジタル契約が可能(無人化)」などの可能性にも目が向けられ始めている。

医療データにアクセスするために、外部とのAPI接続やPDFファイルから必要なデータだけを抽出する技術も進化を続けている。消費者への直接販売に加えて、代理店でもデジタライゼーションの進んだ商品(=代理店エクスペリエンスが良い)を扱いたいと意向が増えており(米国では複数の保険会社と提携している代理店が多い)、保険会社の取組みも待ったなしである。

(Wellnessの訴求で顧客エンゲージメントを高める)
生命保険は、一旦契約すると顧客とのリレーションは一生に及ぶが、その間、顧客とやり取り(エンゲージメント)する機会は多くない。これまでも健康維持を支援するサービス(スポーツ・ジムに通えば、会費の一部負担など)はあったが、個別顧客とのエンゲージメント向上には結びつけづらかった。

コロナ・パンデミックを背景に健康維持への関心が高まっていることもあり、モバイル・アプリを利用した健康増進ツールの推進に力を入れている生命保険会社がある。アプリで顧客の運動量を把握し(心拍/歩数など)、ポイントなどのアワードを提供するとともに、そのデータを保険会社が取り込んで顧客の健康管理を行い各種アドバイスにつなげる。まだ確固たるビジネス・モデルは確立されていないが、顧客とのエンゲージメントを高める方策として、Wellness分野での様々な試みが進みそうだ。

 

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