2021年金融業界の注目点(その1):証券業界の動向

アイテグループでは、毎年年初に金融業界各分野の注目点を「Top10Trendsレポート」として発刊していますが、証券業界の注目点を「Top 10 Trends in Wealth Management, 2021: The Future is Now」と「Top 10 Trend in Institutional Securities & Investments, 2021: Grace Under Pressure」からまとめてみました。

■ ウェルス・マネジメント分野
リテール証券業界ではビジネス環境の大きな変化が相次いだこともあり、2021年に入り、各社は事業モデルの見直しを押し進めるものと思われる。

2019年11月にチャールズ・シュワッブがコミッション・ゼロを発表し、2020年初にかけて各社が追従した結果、今日では米国の個人証券口座の90%がコミッション・ゼロになったと推定される。これを受けて、収益に対するコミッション比率が高いネット証券のM&Aが相次いだ(シュワッブ+TDアメリトレード、モルガン・スタンレー+Eトレードなど)。

その直後に発生したコロナ・パンデミックにより、営業店は閉鎖を余儀なくされたため、対面営業は事実上不可能となり、富裕層顧客においても、デジタル・チャネルの利用(モバイル・アプリ/Webサイトに加え、顧客/FA間のWeb会議利用なども)が急速に広まった。5年後のデジタライゼーションの姿が3ヶ月で実現してしまったとの認識もある。

今後、顧客層が団塊の世代からミレニアル世代に徐々にシフトすることを念頭に置きながら、2021年は、前述のゼロコミッションと(以前から始まっていたロボアドバイザーも加えた)デジタライゼーションにどう対応していくのかが問われる年となるだろう。具体的には以下のような分野の動向に注目しておきたい。
・収益構造の激変から、ウェルス・マネジメント業界で更なるM&Aが進むのか
・アセット・マネジメント企業が、(証券会社を通さない)デジタル直販体制を強化するのか
・次世代顧客に合わせえた商品や営業体制の見直しという課題に、どのような施策が試されるのか(ESG関連商品の強化やSNSなどを使った「デジタル・マーケティング」など)
・上記を推進するためのFA向け施策の変更(新たなトレーニングや報酬プランの改定など)

 

■ キャピタル・マーケット分野
米国キャピタル・マーケット各社は、2001年のWTCテロ事件や2009年のリーマン・ショック以来、BCPやリスク管理の抜本的な見直しと莫大な投資を行ってきたが、パンデミックに際してはこれらが奏功して、業務環境の急変(在宅勤務)やマーケットの急落/ボラティリティ増大という市場ストレスに適切な対処が行えたといえるだろう。

2020年後半の米国市場は、パンデミックに対する政府やFRBの各種支援策を背景に好調を続けているが、先が見通せないマーケット環境は今後も続くものと思われ、キャピタル・マーケット各社の以下のような分野での動きに注目しておきたい。
・在宅勤務環境長期化を踏まえたトレーディング環境/リスク管理の仕組みの最適化、サイバー・セキュリティ対策の見直し。
・上記を支えるためにはデータ活用/データ分析の強化が必須となるが、データ・プラットフォームの導入/強化やデータ・ベンダーとのリレーションがどう変わっていくか。
・セルサイド/バイサイド間の電子プラットフォームの発達、「注文」に関連したワークフローの電子化動向

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