アイテグループでは、毎年年初に金融業界各分野の注目点を「Top10Trendsレポート」として発刊していますが、銀行分野での注目点を「Top 10 Trends in Retail Banking & Payments, 2021: Sezing Opportunities to Transform」と「Top 10 Trend in Wholesale Banking & Payments, 2021: From Disruption to Grlowth」からまとめてみました。
■ リテール・バンキング/ペイメント分野
リテール・バンキング分野では、オンライン利用/モバイル活用が進んできた。ただ、調査によると、消費者の90％は、銀行を選ぶ基準として「近隣に支店があることが重要」だとしており、ここから、いざという時に対面でサポートが受けられる安心感が重要視されていることが分かる。ところが、パンデミックによるロックダウンから、米国では一部の支店の一時閉鎖や入店をアポイント制にする施策が実施され、これを補うためにコールセンターの要員拡充が行われた。
パンデミック終了後、消費者の行動がどのように変化するか様々な見方があるが、支店利用は確実に減少すると見られており、既に店舗網の縮小を始めた金融機関もある。今後は、如何にしてデジタル・チャネルやコールセンターでのカスタマー・エクスペリエンスを向上させ、如何にして支店があること同等の「安心感」を提供するかを目指すと思われる。
一方、ペイメント分野でもデジタル化が加速すると想定されている。インターネット登場以前のリテール・ペイメントは、店頭での決済（現金/小切手/カードなど）と同義語であったが、Eコマース登場して以来CNP決済が増え、昨今ではECサイトでのクロスボーダー・ペイメント（海外の顧客が他国の決済手段で買物をする）が加わってペイメント・インフラは多様な決済手段をサポートしなければならなくなった。更に、店頭でのモバイル・ペイメントも増加し、不正対策の高度化と相まって複雑さを極めている。
このような環境下でパンデミックが発生、Eコマース＝デジタル決済が急増した。ペイメント分野でのコロナ後も予測が難しいが、不正防止と顧客エクスペリエンスを新たな次元での両立させ、しかもコスト削減が可能な決済インフラ構築への模索が続くと思われる。
■ ホールセール・バンキング/ペイメント分野
ホールセール・バンキングの分野でも、デジタル・トランスフォーメーションの論議はあったが、実際の歩みはリテール・バンキングに比べると遅れをとっていた。パンデミックにともなうロックダウン下、行員/企業顧客双方が在宅勤務となり、デジタル・チャネルを使ったペイメントが急増、また入金管理や口座開設など書類が必要となる業務のモダナイゼーションは待ったなしとの認識に変わった。
ホールセール・バンキング業務は、これまで、キャッシュ・マネジメント/貸付/ペイメントなどの各サービスがそれぞれに進化してきたが（＝サイロ化してしまった）、モダナイゼーションの方向性は、エクスペリエンスを考慮した統合化になると考えられている。例えば、AIを使ったキャッシュ・マネジメントで流動性不足を把握すれば、与信枠から自動的に資金が供給されるようなサービスだ。
また、オープン・プラットフォームやAPIを通じて、銀行サービスと企業の会計システム/ERPとの接続機能が提供されると思われる。このような仕組みが整えば、企業の会計システムの操作だけで、送金や資金移動の指示が銀行側に自動送付される。このようなユーザー・エクスペリエンスを重視したサービスが強化されれば、顧客の満足度が高まり、顧客企業とのリレーションシップが強化されると考えられている。今後は、このようなモダナイゼーションの実践に注目しておきたい。
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