アイテ・グループでは、欧米の金融機関やソリューション・ベンダー各社が、コロナウイルス対策として各国が打ち出したロックダウンにどう対応したかを把握するため、緊急アンケート調査を実施した。その結果、26%の企業は在宅勤務初日よりスムーズに業務を開始、62％も数日以内に通常に業務が行えるようになったとの回答を得た。欧米金融機関では、業務のデジタライゼーションやフレキシブルな勤務インフラがそれなりに整備されいたことがうかがえる。
アイテ・グループ・レポート：Under Lockdown: Workplace Agility in Financial Services
■ アンケート調査実施の背景と概要
世界各国の政府が、コロナウイルス対策としてロックダウンを打ち出したことを受け、金融機関やIT企業は、迅速な在宅勤務への切り替えが必要となった。
アイテグループでは、各社の対応状況を把握するため、2020年4月3日から12日にかけて、欧米を中心とした金融機関/金融ソリューション・ベンダー500社を対象に「在宅勤務の準備状況と実施状況」「業務時間」「生産性」「在宅勤務の満足度」「在宅での業務遂行に関する課題」など15項目のオンライン・アンケートを実施、回答が得られた307社の見解を分析したレポートをとりまとめた。
■ アンケートの集計結果
アンケートの主な結果は以下のとおり：
- コロナウイルス危機以前でも、平均して週1日程度の在宅勤務が行われていた。ただ、在宅勤務経験ゼロの社員の割合も、金融機関の場合約半数、ソリューション・ベンダー企業の場合は約三分の一あった。
- 金融機関の62%が、在宅勤務開始直後に多少の問題に遭遇したが数日以内に解消した。26%は在宅勤務初日から何の問題も生じなかった。リモート業務の開始時に大きな支障があったとする割合は10%、3%がアンケート調査時点でも在宅勤務に支障があるとしている。
- 金融機関の半数以上が、ロックダウン開始後、顧客サポート/コールセンター対応が増加したと回答している。ただ、サポートの増加が売上増に結びついた割合は三分の一程度でしかない。
- 金融機関/IT企業の社員の視点からは、自社の在宅勤務に対する準備（必要なツール/業務プロセス/コミュニケーション時のルール/セキュリティ対策など）は適切であったとの評価が多い。ただ、ロックダウン直後にサイバーセキュリティ・ポリシーを見直した企業も多い。
■ 今後の対応
アンケートの結果からは、今後以下のような課題に注目する必要があると考えられる。
（社員に対する対応）
・在宅勤務に対する社員の「経験」は様々であり（リフレッシュして元気になった社員もいれば、疲れ果てている社員もいる）、 経営者は在宅勤務による社員の経験は一様ではないことに留意する必要がある。全体的には、フレキシブルな勤務形態への期待が高まり、最終的には在宅勤務が増加する可能性が高い。
（業務のデジタライゼーション）
・フレキシブルな勤務体制の構築を目指し、業務プロセスの見直しやペーパーレス化が進むと思われる。システム・インフラも、在宅勤務を前提としたセキュリティ対策やネットワークの再検討が必要になるだろう。
（フレキシブルなサービス体制）
・多くの銀行店舗が一時閉鎖になる一方、顧客サポート・ニーズは急増したことから、これを柔軟にこなせる体制（在宅コールセンターやチャットボットの増強など）が求められる。それをローコストで実施するためには、更なるデジタライゼーションが必要だろう。
Add new comment