リテール証券事業は、ゼロ・コミッションやロボ・アドバイザー(低料金のポートフォリオ管理サービス)が導入され価格破壊が進んでいる。証券各社は、次なる収益源の模索を始めており、一つの方向として、ロボ・アドバイザーと組み合わせて、各種相談サービス(アドバイス/プランニング/ガイダンスなどの表現が用いられている)の有償化が試みられている。アイテグループではこの分野の動向をレポートにまとめた。
アイテ・グループ・レポート:Subscription Pricing Models for Digital Advice: Where’s the Sweet Spot?
■ スケール可能なアドバイザー・モデルの模索
リテール証券事業の収益源は、これまで、売買毎に手数料を受取るコミッションか、主に富裕層向けに預かり資産総額の一定割合(1~2%程度)をアドバイス・フィーとして受取るモデルだったが、米国では2019年後半からゼロ・コミッションが一般化し、更に資産運用をオンラインで自動的に行うロボ・アドバイザーが低料金/無料で登場し、若年顧客を中心に普及の兆しをみせている。
ただ、これでは、証券会社の収益減に直結してしまい、また「必要に応じて相談したい」という顧客ニーズも満たせなくなるため、証券各社は、ロボ・アドバイザーとバーチャル・アドバイザー(コールセンターからの人的サービス)を組み合わせたハイブリッド・モデルの提供を始めた。事例は以下のとおり:
- メリルリンチ
ロボアドバイザー:Merril Guided Investing(年間フィー:0.45%)
ハイブリッド:Merril Guided Investing with Advisor(年間フィー:0.85%)
- チャールズ・シュワッブ
ロボアドバイザー: Schwab Intelligent Portfolios(年間フィー:無償)
ハイブリッド:Schwab Intelligent Portfolios Premium(当初費用300ドル、毎月30ドル)
- ベターメント
ロボアドバイザー:デジタル(年間フィー:0.25%)
ハイブリッド:プレミアム(年間フィー:0.40%:さらにフィナンシャル・プランニングは1時間199ドルで提供)
■ X世代やミレニアル世代の反応
アイテグループでは、このような各社のハイブリッド・サービスに対する顧客ニーズを探るため、2020年第1四半期にアンケート調査を実施、世帯収入が10万ドル以上 の比較的余裕のあるX世代(40-54歳:255人)とミレニアル世代のうち30歳から39歳の層(以下:シニア・ミレニアルと呼ぶ)176人から回答を得た(比較としてベビーブーマー世代(55歳から73歳)191人にも同じアンケートを実施した)。
結果、資産運用に関し、有償のバーチャル・アドバイザー(コールセンター・ベース)を利用したいとの回答は、シニア・ミレニアル世代で82%に達し、うち19%は月額50ドル以上でも支払うとした(残りは10-49ドルなら払う)。X世代では、73%が利用したいとし14%が月額50ドル以上も可としたが、ベビーブーマー世代は78%が月額料金は払いたくないと回答した。
■ まとめ
・裕福なX世代、シニア・ミレニアム世代では、バーチャル・アドバイザーによる有償サービスが受け入れられる素地がありそうだ。
・証券会社は、これまで明確な付加価値と位置づけていなかった様々な「アドバイス」をロボ・アドバイザーと組み合わせて有償化できる可能性がある。
・アドバイスの内容をカテゴリー分けし、何が有償で何が無償かを明確にする必要がある(ガイダンス/アドバイス/プランイング/ポートフォリオ管理などの区分け)
各社の有償アドバイス/ハイブリッド・サービスが、今後どのように展開していくか注目しておきたい。
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