貿易取引に便乗したマネー・ロンダリング(TBML)をどう防止するか

グローバル規模での貿易がますます盛んになる中、貿易取引に便乗したマネー・ロンダリング(Trade-Based Money Laundering:TBML)が増加する傾向にあり、金融機関/各国の規制当局ともども関心を高めています。アイテ・グループ ではこの分野の動向レポートを 「Trade-Based Money Laundering: Seek, Detect, and Prevent」として発刊していますが、ここではTBMLの概要を解説し、防止策/摘発策の方向性をまとめてみました。

 

■ 貿易取引に便乗したマネー・ロンダリング
WTCによると、世界の貿易額は2019年19兆ドルとなり、更なる拡大が見込まれている。グローバル化の流れに加わる諸国は増加し、フリートレード・ゾーンを設ける地域も拡大している。ただ、歴史的な経緯から、貿易に関連した情報のやり取りは、現在でも紙ベースが大半であり、書類の内容をコンプライアンス面から精査する体制は、貿易量の増大に追いついていない。更に、各国のコンプライアンス・ルールや通関検査の度合いがまちまちという現実もある。

マネー・ロンダリング犯罪者は、貿易取引に便乗して金銭的な価値を他国へ移転させる方策に注目しており(Trade-Based Money Laundering:以下TBML)、金融機関や監督官庁は危機感を強めている。例えば、書類に記載された商品の内容や数量が改ざんすれば、価値を輸出先に移転させたり/輸出元に残すことができる。実際には、国際禁輸品や規制対象物質、二重仕様品目(武器転用規制)を関連づけたマネー・ロンダリングが行われているという。

 

  ■ 簡単ではない解決策  
TBML対策は難しい。これまで金融機関のアンチ・マネー・ロンダリング(AML)施策は、送金相手の正当性を精査することに重点が置かれていたが、TBMLの場合、送金元/送金先だけを見れば問題のないやり取りであっても、多国をまたがる複数回の輸出入とそれにともなう決済を組み合わせ、取引全体で不正が行われるケースが多い。ということは、貿易取引の全貌を把握して不正かどうかを判断しなければならないが、現在、銀行が顧客の送金目的を詳細に把握することさえ行われていない。

金融機関は、まずTBMLにどのような手口があるのかを掌握し、どのようなデータがあれば不正が見つけられるのか理解しなければならない。取引される商品の内容や、取引に関わる事業者や仲介業者の関係性、輸入後の商品の行き先/転売先を知る必要がある。また、途中で、これまで取引のない金融機関を仲介する場合、その信用審査が必要になる可能性もあり、また、場合によっては貿易品を搭載した船舶の寄港地を把握する必要さえ生じるかもしれない。

これら個別のデータは、サード・パーティーから購入できるものも多いが、同時に貿易取引に関する書類のデジタル化が必須であり、更にこれらのデータを機会学習などを使って分析し、既存のAMLモニタリングの仕組みに組み込む必要がある。

 

■ 今後の方向
各国のレギュレーターはTBMLへの関心を強めている。米財務省下の金融犯罪捜査網(FinCEN)は、TBMLに関する報告書を発刊しており、イギリスのFSAも同国の大手金融機関と協議をおこなっていると報道されている、シンガポールや香港の当局は、TBMLに関するベストプラクティスやガイダンスを発行している。

今後は、貿易に関連する書類のデジタル化推進や、貿易取引全体を把握するため、金融機関だけではなく輸出入業者/保険会社/運輸業者を撒き込んだデータ・シェアリングのためのコンソシアムが必要になると思われる。また、将来的には、ブロック・チェーン技術を使ったトレード・ファイナンス/サプライ・チェーン全体の情報共有にまで行き着くのかもしれない。TBMLの取り組みをじっくりフォローしていきたい。

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