アイテグループでは、10月21 - 22日に「Wealth Management in Transition Executive Forum」をバーチャルで開催しましたが、イベントのハイライトとして、Merrill Lynch Wealth Management部門のPresidentであるアンディ・シーグ(Andy Sieg)氏に登壇頂きました。そのインタビュー概要をお伝えします。
■ 「これまでの継続的なIT投資が奏功した。デジタライゼーションの後戻りはない」
10月21 - 22日に開催された「Wealth Management in Transition Executive Forum」(バーチャル・イベント)は、一日目が欧州編、二日目が北米編で、それぞれのウェルス・マネジメント市場の最新動向を講演とパネル・ディスカッションで探った。二日目の冒頭には、Merrill Lynch Wealth Management部門のPresident:アンディ・シーグ(Andy Sieg)氏に登壇頂き、弊社ウェルス・マネジメント部門のReserch Director:Alois Pirkerが同氏のウェルス・マネジメント・ビジネスに対する最新の認識を伺った。
(Q1) コロナ・パンデミック下、メリル・リンチのウェルス・マネジメント部門のビジネスはどうか?
(A) おかげさまで好調だ。2020年第3四半期の顧客預り資産は前年比6%増で3兆1000億ドルとなった。新規顧客(House Hold)獲得も平年の4倍の勢いだ。
(Q2) オフィスは閉鎖となり、顧客との面談もできない中、好調な理由は何か?
(A) これまで年間30億ドルのIT投資を続けていたことが功を奏した。3月には1万5000人のアドバイザー(FA)が一斉に在宅勤務(Work From Home:WFH)へ移行したが、システム/電話システムなどフレキシブルな対応が可能で、顧客との緊密なコンタクトに支障が無かった。結果、3月のマーケット乱高下時にも狼狽売りは起こらず、顧客満足度は高い。
(Q3) デジタル・エンゲージメントがうまく機能したとの認識か?
(A) そのとおり。例えば'第3四半期の3ヶ月間に顧客とのビデオ会議は10万回で1年前の7倍だった。顧客の80%はデジタル・チャネルで弊社へアクセスしてくる。5年先の未来が3ヶ月で実現した感じだ。あるFAから100歳の顧客がスマホで顔認証を使い始めたという話を聞き、元には戻らないと確信した。
(Q4) デジタル化が一挙に進展したが、5年先10年先のウェルス・マネジメントはどうなると思うか?
(A) 明るいと思う。顧客は世の中の不確実性が高まったと認識している。アドバイスの出番である。顧客とのリレーションは、資産管理中心から相続や就職/転職までライフ・プランナー的な立場に変わっていくのではないだろうか。デジタル活用でスケールが容易となり、リーチできる顧客が広がり生産性も上がる。
(Q5) テクノロジーで可能になった「アドバイスのスケーリング」をどのように生かしていくか?
(A) 一つのアプローチがBank of Americaプランドで開始した「Life Plan」だ。これまでFAは、生産性を意識することはあまりなく、「質」最優先でHNW顧客に対応していた。スケールするためには、業務プロセスを分析しタスク単位でデジタル化する必要があるが、結果、同じ人数のFAでより多くの顧客に対応できるようになる。例えば新規口座開設をデジタル化すれば、書類のやり取りで1週間かかったものが数時間となり、生産性も顧客エクスペリエンスも向上する。
ライフ・プランはBank of Americaに口座のある6000万顧客を対象としている。富裕層(HNW)やマス・アフルーエントというセグメントではなく、アメリカ国民全員に「ゴール・ベース・プランニング」「キャッシュ・フロー管理」「アドバイス(人間ORデジタル)」を提供したいと考えている。
(Q6) ライフ・プランでフィナンシャル・アドバイスを提供するには、様々なサービス間でデータ共有が必要になると思うがどうするのか?
(A) レガシー・システムのインフラでは、スケーリングに無理がある。これまで証券会社は、例えばフィナンシャル・アドバイスと商品組成はまったく別ビジネスと捉え、部門間の交流はほとんど無かった。Life Planでは、条件を変えればキャッシュ・フローが変化し、ポートフォリオも変更されてゴールの達成度がどのように変化するか、瞬時にシミュレーションできる必要がある。
(Q7) 今後アドバイザーの役割はどうなるのか?
(A) これまでFAの仕事のかなりの部分が「ポートフォリオ管理」であったが、テクノロジーによるサポートが強化されれば、最終的にはアドバイザーの価値が高まり顧客への付加価値となるはずだ。FAの任務は、顧客が「価値がある」と考えるサービスを提供することであり、旧来の考え方に捉われることなく一層の柔軟性/アジリティが求められるだろう。
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