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クラウド環境へ全面移行:ステート・ストリートの場合

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自社データセンターをアマゾンに売却するとともに、マイクロソフトAzureも併用するステート・ストリートのマルチ・クラウド戦略です。成果が注目されます。

■ アウトソーシング・ビジネスの強化とクラウド移行の準備
ステート・ストリートは、18世紀に設立された米国の老舗金融機関で、主力ビジネスであるアセット・マネジメント企業向けカストディアン・サービスは1924年に開始された。

その後、バイサイド企業向けミドルオフィス・アウトソーシングやデータ・マネジメントがサービス・メニューが加わり、更に2018年には、アセット・マネジメント企業を対象にフロント・オフィス・トレーディング機能やポートフォリオ管理機能等を提供するCharles River Development社を買収して、バイサイド向け主要ビジネス・ソリューションを取り揃えた。2020年からは、これら”End-To-End” アウトソーシング・サービスを「Alpha」の統一ブランドで推進している。

クラウド利用に関しては、2019年にCharles River社ソリューションのマイクロソフトAzure環境への移行を発表、2020年12月からは、Alphaのデータ・マネジメント・プラットフォームをAzure環境で提供している。一方、2022年11月には、マサチューセッツ州にある自社所有のデータセンター2か所(合計2万3000平米)をアマゾンに2670万ドルで売却した。

■ マルチ・クラウド環境への全面移行アナウンス
2023年1月、ステート・ストリートは自社システムの全面クラウド移行を発表した。同社では「数年をかけ、既存システム環境を(AWSとAzureを組み合わせた)マルチ・クラウド環境(パブリック・クラウドとプライベート・クラウドを併用)へ全面移行する(=Full Transition to the Cloud)」としている。アマゾンへ売却したデータセンターに関しては、「数年かかると思われるデータセンターのクラウド移行をスムーズに行うため」と説明している(データセンターを廃止するかどうかは明言していない)。

クラウド全面移行の狙いに関しては、「テクノロジー・インフラを近代化/標準化することで、レジリエンシー/フレキシビリティを高めるとともに、Alphaを中心とした顧客サービスのスピードアップ(データ提供のリアルタイム化、新サービスの迅速な提供)を実現したい」としている。

■ ステート・ストリートのアプローチ
企業が全面クラウド移行を進めるために、既存データ・センターをクラウド・ベンダーへ売却するというアプローチは世界初だと思われ、その成否が注目される。AWSにとっても、移行に時間をかければコスト増になると想像されることから、当ケースを活用して迅速で確実な全面クラウド移行ノウハウを確立したいとの認識があるのではないかと思われる。

アセット・マネジメント業界では、ステートストリートの野心的な新サービス「Alpha」の動向が注目されているが、そのインフラとなるクラウド環境に関するアプローチも興味深い。