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規制環境の複雑化とレグテック・ツール:レギュラトリー・インテリジェンスの活用

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2009年の金融危機以降、新たな規制の導入や既存規制の変更が常態化しており、金融機関にとっては期日に合わせた対策実施が大きな負担となっています。欧米では、規制に関する様々な情報を収集/分析するレグテック・ツール:レギュラトリー・インテリジェンス(RI)の利用が始まっており、アイテ・ノバリカ・グループではこの分野の動向をレポート:Regulatory Intelligence Market Overview: A Must-Have for Complex Regulatory Compliance Obligations にまとめています。

■ 金融関連レギュレーションの複雑化
2009年の金融危機以降、金融分野における新たな規制の施行や既存規制の変更頻度が増加しており、トムソンロイターの調べでは、グローバルで毎年4万件以上の規制変更が行われるという。金融機関にとっては、レギュレーション対策が遅れることは処罰の対象になるだけでなく、対策不足で脆弱性が放置された場合、万一の際には大きな風評リスクを負うことになる。

金融機関各社では、体制を強化してレギュレーション変更に対するモニタリングや分析を行い規制変更の影響を想定するとともに、必要にあわせて対策を立案し社内のコンセンサス作りやテクノロジーの導入をすすめなければならない。(特に欧米では社員の入れ替わりが頻繁であることから)専門家を雇用しても個人の知識/能力の頼りすぎるとその人が退社した場合の影響が大きいため、レギュレーション情報の収集/分析に関する自動化/システム化の必要性が認識されるようになった。

■ レギュラトリー・インテリジェンス(RI)プラットフォーム
「レギュラトリー・インテリジェンス(RI)」は、このような金融規制情報にまつわるソリューションだ。正式に導入された規制に関する情報をプレス・リリースやWebサイトから収集するだけでなく、規制当局のBlogやTweet、イベント等による高官の発言、各種ガイダンス、メディア記事などを自然言語処理を活用して分類/分析し近未来のレギュレーション変更を予知する機能を提供する。Thomson Reuters、LexixNexix、PWC、Deloitte/Carlyitcsなどが主要ベンダーだと考えられる。

各社のサービスには以下のような機能が含まれているが、大別すると情報収集に注力するベンダーと、情報分析に注力する企業があるようだ。後者においては、専門家による分析を付加価値とするベンダーと、広範囲な情報からの分析にAIを積極的に利用するプロバイダーがある(人的分析/AI分析併用型もあり)。また、顧客が既に導入している分析機能へのAPI接続を提供するベンダーもある。
・規制情報ダッシュボード
・スクリーニング機能(事業内容/地域など)
・アラート機能
・多言語対応
・規制カレンダー・ビュー

■ 今後の動向
金融機関にとっては、規制動向のモニタリング/分析業務は純粋なコスト・センターでありテクノロジー投資の対象とはなりにくいとの見方もあったが、各ベンダーの意見をまとめると、RIに対する欧米金融機関の認識は広がっており、今後ESG/仮想通貨/BNPLなどで新たなレギュレーションが登場する可能性が高いことを考えると、RIプラットフォームの普及に拍車がかかると思われる。APACや中東/ラテンアメリカ市場などの動向も注目される。

アイテ・ノバリカ・グループでは、2022年のRI市場規模をUS$2億8000万ドルと推計、これが2025年にはUS$6億ドルを超える(年間CGR29%)と想定している。医薬品や食料品などの分野でもRIベンダーが出現している。今後のこの分野の動向に注目しておきたい。