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2023年は銀行におけるパブリック・クラウド活用元年?

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米国の大手金融機関では、ここ1-2年パブリック・クラウド活用に関する発表が相次いでいます。それらをまとめるとともに、今後の動きを予想してみました。

■ クラウドに対する認識のシフト
2022年は、これまでパブリック・クラウド利用に慎重だった金融機関が、その活用に舵を切った年だったとの評価になるかもしれない。アメリカン・バンカー誌が米国金融機関170行に実施した調査によると、40%が2023年のIT課題トップ5にパブリック・クラウド活用を挙げており、2023年末までに業務システムの20%以上がクラウドで稼働しているだろうとした銀行は80%に上った。

アイテ・ノバリカ・グループが2022年第4四半期に実施した調査でも、デジタルバンク/データ分析/コア・システム/セキュリティなどの分野でパブリック・クラウド利用が実用段階を迎えたと認識されており、平均20%前後のアプリケーションが既にパブリック・クラウド上で稼働しているとの結果だった。

■ 大手銀行のクラウド導入計画
パブリック・クラウド活用の取組みが早かったCapital One銀行(全米ランキング九位)では、2015年頃からアマゾンAWSの利用を本格化、2022年5月時点でコア・システム(同行ではカスタマー・データ・プラットフォームと称している)の移行を終え自社DCからメインフレームを撤去したとしている。クラウド移行の最大のメリットはシステム開発の迅速化とフレキシビリティの向上で、メインフレームでは月間のシステム・リリースが最大4回までだったが、Cassandra/DataStax環境下では月間100回のリリースが可能だという。

米国のメガバンク(大手四行)では、2019年にBank of America(同二位)がコンプライアンスやデータ保護の分野でIBMのパブリック・クラウドを活用していくと発表、また2021年9月には、JP Morgan Chase銀行(同一位)が、米国のコア・バンキング・システムをThoughts Machine社のパブリック・クラウド・ソリューションに置き換える計画を公表している。Wells Fargo銀行(同三位)も同時期にパブリック・クラウドの活用方針を発表、マイクロソフトとグーグルの2社を活用しながら10年程度のスケジュールでクラウド移行するとしている。

その他、US Bank(同五位)とTD Bank(同八位)はマイクロソフト(Azuire)と、Key Bank(同20位)はGoogle/Deloitteと連携してパブリック・クラウド移行を進めることを発表している。

■ メリット享受には、社員教育/企業カルチャーの変革が必要
これら各行がパブリック・クラウドに舵を切った背景には、クラウド環境における安定稼働やセキュリティ確保が技術面から可能となり、クラウド本来のメリット(フレキシビリティの確保やデータ分析の高度化など)に注力できるとの認識がある。

今後、金融機関がパブリック・クラウドの潜在力を最大限に活用するためには、データ分析やアジャイル開発/DevOpsなどを使いこなせる技術力だけでなく、ビジネス・サイドや経営陣においてもクラウドのメリットを理解し、それを活用する姿勢を打ち出すことが重要になると思われる。金融機関のパブリック・クラウド活用を引き続き注目していきたい。