欧州ペイメント・ソリューション大手Nexi社:いつでもどこでもデジタル払いが可能に

イタリアのペイメント・ソリューション・プロバイダー:Nexi社の話題です。欧州有数の大手アクワイアラー/プロセッサーですが、柔軟なシステム・インフラを備えることで、フィンテック企業並みの新サービスを投入しており、欧州域内全体で次世代決済インフラの提供を目指しているようです。Aite-Novarica Groupでは、2021年Digital Wallet Impact Award受賞企業として同社のサービス概要をレポートにまとめました。

■ 欧州決済インフラの課題
欧州では、1999年に統一通貨が導入されたものの、クレジット・カード決済のためのペイメント・バックボーンは、それ以前の仕組みのままのため、例えばドイツ発行のカードをフランスで利用した場合、通貨はユーロであるが決済手順はクロスボーダー扱いとなる(=決済コストが高い)。更にEコマースでは、人の動き以上に国をまたがった商流/決済が増加している(例えば、ドイツの消費者がスペインのECサイトで商品を買うなど)。

一方、小売事業者は、汎ヨーロッパでの店舗網拡充を意識しており、各国毎に支払いに関する習慣(キャッシュレスが普及している国もあれば現金決済が主流の国もある)は異なるものの、決済サービスは(各国毎ではなく)全域を単一ベンダーに任せたいと考えるケースが増えている。


■ イタリア決済大手Nexi社
イタリアのペイメント・サービス大手Nexi社は、2019年に上場した後、2020年にはデンマークのNetsを買収、更に2021年にはイタリアのライバル企業SIA社との合併が承認され(=独禁法の審査が長引いていた)、欧州でも最大クラスの決済サービス事業者となった。合併後のNexiは、カード発行銀行(合計1億7000万枚)と小売業(230万社)に決済サービスを提供、欧州全域でのサービス展開を強めるものと思われる。

このクラスの規模をもつ決済サービス企業(アクワイアリング事業)は、様々な規模の小売事業者をカバーする必要があり(クロスボーダーで店舗を展開する大規模事業者やEC大手から小規模の小売店まで)、またPOS端末や決済手段が多様化していることから(ワイヤレスPOS/モバイルPOSなど、またモバイルWallet決済やQRコード決済、BNPLなど)、新サービスへの取組みは遅々としているが、Nexi社の場合は、ペイメント・インフラをOpenWayにマイグレーションしてフレキシビリティを高めている。


■ Pay-by-Link決済の提供
2020年、Nexiは「Pay-by-Link(リンク決済)」の提供を開始した。これは、小売事業者が顧客にメール/SMSで決済サイトURLを送ると、顧客自身がスマートフォンから決済情報を入力して決済する仕組みだ。(1)電話注文の決済(ECサイトのない場合)や、(2)POS端末がない店頭でのカード決済(顧客のスマホをPOS代わりにする)、更には(3)デリバリー時の玄関での支払いにも活用できる。顧客がApple PayやGoogle Payを利用している場合は、指紋/顔認証でOKだ。

リンク決済は、StripeやPayPalなど多くのフィンテック企業が提供しているが、Nexiのような大手アクワイアラーが品ぞろえの一環として提供している点が興味深い。Nexiは、欧州域内において「いつでもどこでも決済手段を提供する」.ことを標ぼうしており、そのためのインフラを整え、あらゆるマーチャント/消費者のあらゆる決済ニーズに対応するとしている。同社の動き、及び欧州における決済システムの動向に注目しておきたい。

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