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データ活用の高度化には「データ・ストラテジー」が必要

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人工知能を使った分析技術や大量のデータを安価に取り扱えるクラウドの出現など、企業経営やカスタマー・エクスペリエンス向上にデータを活用する機運が高まっています。ただデータ分析の前提となる一貫性のあるデータを準備することには、大きな困難を伴うことが現実です。アイテ・ノバリカ・グループでは、お客様で組織化しているFinancial Services CIO/CTO Research Councilメンバーに対してアンケートとヒアリング調査を実施、そのベストプラクティスをレポート:CIO/CTO Checklist : Best Practices for Developing a Data Strategy and Data Architecture にまとめました。ここではその概要をご紹介します。

■ データ活用への注目と課題
金融機関は、機械学習や予測分析などのテクノロジーを不正防止やコンプライアンス対応の高度化に用いてきた。その結果、このような新しいデータ分析技術は、企業経営やカスタマー・エクスペリエンス向上にも役立てられるとの認識が高まっている。

これまでも、リスク管理など分野で全社データの集約/活用が必要となり、データ・ウエアハウス/データレークの構築が進められたが、現実には「ばらばらな基幹システム」「一貫性のないデータ・インテグレーション」「そもそも、如何にして全社のデータを網羅するか」など、データ分析の基盤となる質の高い全社データを揃えられた企業は皆無に近い。そのため昨今の動向は、金融機関IT部門/CIOが直面する古くて新しい課題となっている。

■ 金融機関CIO/CTOはどう考えているか
アイテ・ノバリカ・グループでは、お客様で組織化しているFinancial Services CIO/CTO Research Councilメンバーに対して、全社的なデータ活用に関するアンケートとヒアリング調査を実施した。そこから得られた結論は「金融機関が包括的なデータ活用を行うためには、企業戦略と軌を一にして、よく吟味された全社的なデータ・ストラテジーの立案が必須だ」となった。

また、データ・ストラテジーには、以下のような要件が必要があり、全社的なコンセンサスがない限り、プロジェクトが前進しないとの認識も明らかになった。
・データは資産だとの認識を持つこと
・各データを、既存のアプリケーションで用いられている属性(データのフォーマットやデータ構造など)から切り離して純粋なデータと捉えること
・データ分析の基盤となるデータ・アーキテクチャーをデザインし、前述のデータをそれにあてはめること
・データ・ガバナンスを徹底するため、社内ルールや自動化ツールを導入すること
・金融機関各事業部門が遵守すべきレギュレーションとの整合性をとること

■ データ・ストラテジーをどう実現するか
もちろん、データ・ストラテジーのあるべき姿と現実とのギャップがない企業は皆無で、その課題は、ITインフラにとどまらず、ビジネス・プロセスや組織にも及ぶ。これを乗り越える一つの方策として、CEO/COO直轄のチーフ・データ・オフィサー(CDO)職を設ける方法が考えられる(IT部門内やCIO/CTO傘下であるとうまくいかないだろう)。IT投資に関してもCDOが主導権を発揮して予算を獲得し、導入に関してCIOとのコーディネーションを行う必要がある。

CIO/CTOインタビューにおいても、データに責任を持つCDO職を設けている企業はまだ15%でしかなく、まずそこから始める必要がありそうだ。更に、このようなデータ・ストラテジーに沿った仕組みが構築できても、事業環境やテクノロジーの進化により定期的な戦略の見直しが必要になると思われる。データ活用の高度化に関しては、データ・ストラテジーを含め、今後も様々な視点からフォローしていきたい。