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SMB向けコーポレート・カードに注力するフィンテック企業:カナダのCaary社

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創業間もないスモール・ビジネスは、事業規模が小さく経営も安定していないとみられることから、コーポレート・カードを発行するには、経営者個人の信用を利用するしか方策がありませんでしたが、オルタナティブ・データを活用し、更に次世代経営者のニーズを組み込んだコーポレート・カードを発行するフィンテック・ベンチャーが登場しています。アイテ・ノバリカ・グループでは、2022年4月発行した「Commercial Banking Fintech Spotlight Q1 2022」でこの分野に挑戦するカナダのCaary社を取り上げました。
 

■ スモール・ビジネスとコーポレート・カード
クレジット・カードが当たりまえの社会で育ったミレニアル世代/Z世代が起業するケースが増加しているが、コーヒー・ショップ店主であってもECサイト・オーナーであっても、経営者はカードを使って仕入れを行い、運転資金の資金繰りにもカードのリボ払いのような簡便な短期融資を求めている。

一方、金融機関がコーポレート・カードを発行するには、企業の長期に渡る信用情報が必要で、たとえベンチャー・キャピタルから数億円の資金供給を受けていても、社歴が短かければ経営者個人の信用情報に頼るしか方策がなかった。
 

■ Caary社が提供するサービス
2019年に創業したカナダのフィンテック企業Caaryは、個人の信用情報を利用せず様々なオルタナティブ・データで信用枠を設定する仕組みを提供している(詳細は未公表)。併せて経営者や社員がミレニアル世代/Z世代であることを想定し、以下のような付加価値も提供している。

(1)社員向けカード発行プラットフォーム
社員向けコーポレート・カードを枚数制限なく発行でき、社員毎に限度額を設定することも可能となっている。カードの新規発行は、即時かつバーチャル・カードで行われる(後日リアルカード郵送も可)。

(2)経費管理
社員がコーポレート・カードを利用すると同時に、レシートの写真を撮るようアラート・メッセージが送られる。レシート画像はAIが解析し、会計システムの適切な勘定科目に自動記帳される。QuickBooksやNetSuite、XEROなどSMB向け主要会計システムと連携している。

(3)支出管理/支出分析
定期的な取引のあるサプライヤーにはバーチャル・カードを発行することも可能で、更に支出カテゴリー別や社員がカードを利用する時間に対し、アラートを設定することも可能となっている。
 

■ 急成長
Caaryは、銀行と提携して自社カードを発行しているが、前述の仕組みをコーポレート・カード・プラットフォームとして他の金融機関にも供給している(ホワイトレーベル事業)。コーポレート・カードに関連するフィンテック企業は多数登場しているが、カードの承認アルゴリズムと経費処理の自動化、更に運転資金に関する短期融資を組み合わせた統合サービスとした点がユニークで、カナダでは、既に100社以上のSMBがCaaryを利用している。米国進出も計画中だという。

同社の今後の動向をフォローするとともに、コーポレート・カード分野のフィンテック企業の動きにも引き続き注目しておきたい。