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急がば回れ!カスタマー・エクスペリエンス改善にはフレームワーク活用が有効

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様々な業界で、営業促進や顧客満足度向上のためカスタマー・エクスペリエンス(CX)の重要性が認識されてきました。ただ、全社的なCX向上を目指すためには様々な工夫が必要で、かつそれらを有機的/総合的に組み合わせる必要があります。アイテ・ノバリカ・グループでは、2022年3月、カスタマー・エクスペリエンス専門のリサーチ部門を新設し、フレームワークを活用したCX改善のアプローチをレポート:Understanding Consumer Experience : A CX Frameworkにまとめました。ここではその概要をお知らせします(当レポート全編は、こちらから皆様にダウンロード頂けます)。

■ カスタマー・エクスペリエンス(CX)への認識高まる
2022年初、アイテ・ノバリカ・グループでは、金融機関200社に対してCXアンケート調査を実施した。回答の80%は「CXを改善することで競合を有利に進めたい」と考えており、70%がCX関連の予算を増やすとしている。これまで金融業界では、CXよりレギュレーション対応を重視する傾向もあったが、CXを最優先するネオバンクの出現や、アマゾンなどECサイトとのエクスペリエンスの差が大きくなり、危機感が生じている。

ただ現段階の取組みは、Webサイト/モバイルアプリの改善や、特定の業務/特定の処理に関するCXに限定されていることが多く、全社が統一された方針でCXに取り組む事例は少ない。確かに顧客満足度の把握は、これまで広く行われてきたが、何を改善すれば満足度が向上するのかが計測されていないケースが多く、優先順位も把握しづらかった。結果、CXは一部の取組みに留まったり、投資効果が把握できないという課題を抱えていた。

■ CXフレームワークの活用
アイテ・ノバリカ・グループでは、全社的なCX改善に取り組むには、企業と顧客との全接点(タッチポイント)を把握して分類し、優先順位をつけながら全体のレベルアップを目指す必要があると考えている。ここではフレームワークの一例として4段階のアプローチをご紹介する。

1)顧客とのタッチポイントや顧客が利用するプロセスのリストアップ(Cataloging)
タッチポイントのリストアップは膨大な作業となるが、以下3つのカテゴリー別に列挙することも一考だろう(二つのカテゴリーにまたがるプロセスもある)
(A)営業段階(広告/Webサイト/ロゴ・デザインなど)における顧客との接点(信頼感を醸造するためのブランド・エクスペリエンス)
(B)サービス利用段階(毎月の支払いや残高確認、送金など)をスムーズに行うためのATM/モバイルアプリ/Webサイト/店頭などでの接点(ストレスのないトランザクション・エクスペリエンス)
(C)イレギュラーな処理(支払いに問題があった、カードを紛失した、不正があった等の場合の連絡、事故を起こして保険で車を修理するなど)の接点(顧客がストレスを感じた中で対応するリアクティブ・エクスペリエンス)

2)リストアップしたタッチポイント/プロセスの詳細把握(Journey Mapping)
各ステップの詳細や終了条件、順序/他のプロセスとのつながり等を把握する。必要ならばプロセスの改善に関する要望(タイミングを早める/オムニチャネル化など)も収集する。

3)各タッチポイント/プロセスに対する顧客の期待値の把握(Matching Expectation)
リストアップした各項目に対して、パーソナライゼーションやタイミング、コミュニケーション・チャネル、必要度合いなどの視点から重要度を設定し、実情とのギャップを把握するとともに、改善策を考える際の指針とする。

4)改善度の計測方法の確立(Measurement)
改善度の計測は、企業の視点ではなく、顧客ニーズから見た尺度である必要がある。計測の際は(顧客属性毎に分析するケースもあるため)属性を含んだデータを収集する必要がある。

■ システマチックなアプローチの重要性
CXの究極の目的は、あらゆるタッチポイントで顧客の期待通り/期待以上のエクスペリエンスを提供することであり、全社の状況を把握できるフレームワークを導入した上で、システマチックな改善を進める必要がある。CXの責任部署には、業務とCX改善の双方に精通した人材が必須となるので、自社の業務や課題、業界慣行/レギュレーション等を理解している社員にCX改善のアプローチを理解してもらうのが近道だろう。多くの企業で、全社的なカスタマー・エクスペリエンス改善を進めていただければと思う。