自動車保険フリート契約にもテレマチックスの波:LifeSaver Mobile

米国では、走行中のスマホ操作に起因した業務用車両事故が問題視されていますが、企業や損保会社を巻き込み、専用アプリを活用して運転手のスマホ操作を未然に防ごうとするベンチャー企業LifeSaver Mobileが登場、弊社レポート「LifeSaver Mobile: Preventing Distracted Driving Through Advanced Technology」でも取上げています。


■ 走行中のスマホ操作と交通事故
米国では、交通事故の27%がスマホ操作に起因していると推計されている。一方、業務用車両は1億5000万台以上あり、交通事故の40%が業務関連の走行で生じている。コロナ・ウイルスの蔓延を背景に、個人所有の車両の走行距離は減る方向だが、業務用車両は増える傾向が見られる。

このような状況下、多数の業務用車両を運用している企業は、走行マナーや走行中のスマホ操作を禁止すべく運転手のトレーニングを行っているが、効果が上がってかどうかの確信は持てていない。その間、企業契約の自動車保険(フリート契約)は毎年値上がりしている。一方損害保険会社は、フリート契約の成立後に運転手をモニタリングする方策(個人用テレマチックス保険のようなもの)がなく、結果、保険料の値上げにも係わらず、2010年以降フリート契約は業界全体として赤字となっている。


■ LifeSaver Mobileが提供する解決策
2013年創業のLifeSaver Mobileは、複数の業務用車両を運用している企業をターゲットとしたスマホ・アプリと管理者用ダッシュボード(=クラウド・アプリ)から成るサービスだ。

スマホにLifeSaverアプリを導入すると、10マイル/時(16km/時)以上で走行している車両からはスマホが操作できなくなる(音声コマンドなどハンズフリー機能は利用可)。「緊急対応」の操作を行えば解除できるが、管理者用ダッシュ・ボードにアラートが送られる。また、法定速度以上で走行すると音声ウォーニングが発せられる機能もある(管理者へアラートも送られる)。

管理者用ダッシュ・ボードには、アラート受信のほか、運転者にアプリのダウンロード/インストールを指示したり、利用時間帯の設定(営業時間内か24/7かなど)やアラート発信の条件設定、データの分析/レポートの発行等が行え、運転手のレーティングも可能だ。他社サービスと比較すると、ソフトウエアだけ(専用のセンサーやカメラの設置が不要)で、でスマホ操作のブロックとモニタリングができることが大きな特徴だ。


■ 今後の施策
現在、LifeSaverは、50台以上の業務用車両を運用している企業を対象に直接営業を行っており、スマホ1台あたりの月額料金は概ね5-10ドルとなっている。損害保険会社を代理店チャネルとして活用する方策も開始しており、中堅の損保会社数社がすでに代理店となっている。今後は、保険会社との連携を強め、LifeSaverを前提としたフリート契約の保険料算定モデルも考案したい意向だ。

システム面では、保険会社向けのレポーティング/ダッシュボードの構築と、データ販売(損害保険会社は、アラート・データを活用して、保険料算出や事故のクレーム処理(事故内容の分析)の精度を向上させられる可能性がある)が視野に入っている。LifeSaverが、業務用車両運用企業と損害保険会社との間でWin-Win-Winの関係を築けるか、注目しておきたい。
 

Add new comment

CAPTCHA
This question is for testing whether or not you are a human visitor and to prevent automated spam submissions.
2 + 15 =
Solve this simple math problem and enter the result. E.g. for 1+3, enter 4.

How can we help?

If you have a question specific to your industry, speak with an expert.  Call us today to learn about the benefits of becoming a client.

Talk to an Expert

Receive email updates relevant to you.  Subscribe to entire practices or to selected topics within
practices.

Get Email Updates