オルタナティブ・データでコロナ下でも企業向け融資ビジネスを積極化

投資分析用に用いられるFoot Traffic Data(店舗や建物へ出入りする顧客に関するデータ:オルタナティブ・データの1種)を、銀行の融資部門がコロナ下における企業向け融資審査に応用して効果をあげており、2020年11月に発刊したレポート「Advan Foot-Traffic Data: Finding the Diamonds in the Pandemic Rough」でも注目しています。


■ Foot Traffic DataのAdvan Research社
Advan Research 社は、携帯電話の位置情報を活用して、店舗や建物へ出入りする顧客データ(Foot Traffic Data)を把握、匿名化して販売する事業者だ。これまで、ヘッジ・ファンドなどの投資家や機関投資家(バイサイド企業)がオルタナティブ・データとして活用していたが、コロナ・パンデミック下、銀行が企業向け融資の審査にも活用を始めている。

アドバン・リサーチは、位置情報を用いるアプリ(地図情報、天候情報、交通情報、ゲーム、SNSなど)を提供する企業が販売しているトラフィック・データ(もちろん匿名化されている)や、携帯電話会社が保有しているスマホの位置情報を集約(=アグリゲーション)し、全世界でスマホ1億台が1億5000箇所の計測地点(商業施設や病院、工場、倉庫、オフィス・ビルなど。大手小売2250社のチェーン店舗を含む)へ出入りする「フット・トラフィック」を販売している。

同社が提供する過去5年分+リアルタイム・データは、建物別/店舗別(何人来たか、滞在時間、どこから来たかなど。ビルの何階かも判別できる)や業種コード別(NAICS:北米産業分類システム・コード)に集約できる。更に、時系列分析も可能なため、季節変動や店舗の営業時間帯での違い、コロナ発生前後の変化などを、様々な角度で比較が可能となる。天候/曜日/ニュースとの相関の把握できる。

アドバン・リサーチのデータは、これまで投資判断分析(企業の業績予想やキャッシュ・フロー推計、商業不動産投資の収益予想など)に利用されてきたが、コロナ・パンデミックを機に、企業融資分野での応用が始まった。


■ 金融機関融資ビジネスでのニーズ
金融機関は、パンデミック下でも融資事業を拡大したい。ただ、パンデミックによりビジネス環境が大幅に変化したことから、パンデミックのため事業が停滞して資金が不足している企業と、パンデミックによりビジネスが伸び、追加資金が必要になった企業を見分け、返済能力を正しく評価する必要がある、また、それらが一時的な問題なのか、長期的な環境変化なのかも適切に判断しなければならない。

大手小売業が融資先の場合、アドバン・リサーチの個別店舗データでコロナ前後の来客状況の推移を把握できるケースもある。企業別データがない中堅企業の場合も、同一業種の傾向値が活用できる。商業用不動産向け融資でも同様だ。また、金融機関自身が、コロナ・パンデミックに際して、自社の融資ポートフォリオの業種による偏りや、ポートフォリオ・リスクを再考する際にも役立つと考えられている

パンデミック下、オルタナティブ・データを活用して融資の審査精度を向上させようとする動きは、デジタライゼーション(DX)の好事例といえよう。今後も様々なDXの取り組みに注目していきたい。

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